
人生を豊かにするひとつの要素として「仲間」の存在は大きいと思います。一見スノーボードは個人競技ですが、1人の選手が大舞台で活躍する為には陰で何十人もの人が支えています。それは、大会にのみならず、自分の練習を支えてくれるスタッフ、先輩、友人、家族、時にはライバルがいるからこそ、自分が成長する事ができます。そんな、仲間は今では数えきれないぐらいいますが、今回はSGライダーの中で最も長いお付き合いをさせて頂いている3名について語りたいと思います。
1人目は、弟的存在の「西原秀彰」。 今では、個性派ライダーそして、ゴリラ的存在の「にし」。 彼と出会ったのは、スノーボードでレースに出始めた頃でした。にしは、中学2年。何とも独特な印象を受けた事を今でも覚えています。始めは、同じTEAMでの活動、そして同じ練習環境へと変化し、だんだん弟の様な存在になっていました。
ダイナランドに、冬休みや春休みを利用して居候として入り、スクールのお手伝いをしながらトレーニングをしていた「にし」。トレーニングより馬鹿な事を一生懸命やっていた事が多かったのですが、そんな中での東海GS優勝は記憶に残っている所です。ストレートなコースをタイトなラインではなくラウンドラインで、カービングでしか滑らない。そんなスタイルを貫き通し、気づけばレースでの爆発的なラップタイムを叩き出していました。そんな男気溢れるライディングは、見ている人を魅了し、ワクワクさせくれました。もちろん、1ミスでぶっ飛んで行くリスクが、さらにみんなの心を引きつけていたのは言うまでもありません。 そんな、「にし」のスタイルからいろいろな経験を積み上げ、気づけば日本のトップレーサーとして一目置かれる存在になっていった「にし」。自分の信念を曲げない部分は、ライディングでも性格でも同じですね。一度考えて決めた事は、実践しないと気が済まない。やるかやらないか。そんな性格はいい点でもあり不器用な点でもあります。その不器用な所が「にし」らしい所なんですけどね。 いろいろと長い付き合いだからこそ、本心が分かるように思います。今後の「にし」の活動にも、独自のスタイルのカービングシーンをみんなに見せていってほしいです。
2人目は兄貴的存在の「片山雅登」 しなやかな滑りで、見る物を魅了するライダーといえば片山雅登。 そのしなやかさとは裏腹な体育会系。今でも思い出すのが、初めて会ったときのインパクト。坊主頭にヘルメットのスタイルで、全身青色のウエア。話せばとても熱いお兄ちゃんでした。そんな出会いから、プロという目標に向かって共に刺激し合いながら、同じスクールにてトレーニングをおこないました。この切瑳拓磨した日々があったからこそ自分が大きく成長できたのだと思います。
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私が片山さんを「兄貴」と思うのはただ年上というだけではありません。常に先を見据え、物事を論理的に話し周囲を納得させる所、人を引きつける魅力がある所は、まさに理想のリーダー像。人を引っ張っていく人間のあり方を学びました。スノーボードでは同じライバルではありますが、競技以外の場面でもいつも学ぶ事ばかりです。兄貴とは呼んだりした事はありませんが、そんな存在だからこそ、言いたい事をはっきりと伝えられるし、時には意見が合わず言い合いになる事もありますが、一つ一つの言葉に説得力があり、改めて考える幅を広げてもらう事が多々あります。今では、年間通して同じ仕事に携わり、ライダーの活動、スクールの活動、夏の活動を共にしています。 特に、スノーボード業界へのキッズ・ジュニア育成や初心者層の拡大への普及活動はどこよりも重要視して取り組んでいる所です。今後更なる活動を元に共に盛り上げていける様な行動をしていきたいと思います。
3人目は師匠の「杉本孝次」 言わずと知れたスノーボード界のレジェンド杉本孝次。 自分の人生での分岐点となったのは、師匠こと杉本さんとの出会いでした。 それは、自分が21才の春、ニュージーランドにいきたいと思い、仲間と計画していたのが急遽キャンセル。どうしようか迷っていた時に、当時のスノースタイルのキャンプ情報のページで「杉本孝次のニュージーランドアクティブキャンプ」を見つけました。1度話を聞いてみようと思い、杉本さんと話をしたのが初めての出会いでした。その時は、レースについて全く知らない中で、上手くなりたいという単純な思いで話を聞いていました。しかし、上手くなる為に「レースをやってみよう」という気持ちに変化していき、初めての海外生活でスノーボードの成長と、人としての成長が出来る気がして参加を決意したことは今でも忘れません。 海外での環境は何もかもが新鮮そのものでした。英語は一切出来ない、右も左も分からない、スキー場は広い、さらには多くのプロ選手との共同生活。ドキドキだらけの初ニュージーでした。 そんな不安も、いつも気にかけてくださった杉本さん。トレーニングのみならず、生活に関してまでいろいろと教えて頂きました。日中はスノーボード、夕方はサッカーやテニス。夜は麻雀。そんな環境は自分には十分すぎる濃い3ヶ月の滞在でした。 そこでの人のご縁は、実は今でも多く繋がりをもっています。 そして、ニュージーランドからの帰国後、冬のスノーボースクールへ来ないか?と誘って頂きました。今、私がこうしてスノーボードを続けていられるのは、正に師匠「杉本孝次」のおかげです。
師匠にこんな経験や、きっかけをもらっているのは、もちろん僕だけは有りません。数多くの方へ良い影響を与え、誰をも惹き付ける不思議な魅力を持っているのが、周囲からレジェンドと呼ばれる理由だと思います。前回の、ライダー勇上華子のコラムにもありましたが、今でも若い世代に絶大の影響力を誇っているのが分かると思います。「継続は力なり」と言いますが、長年のプロ生活から全戦出場記録は、まさに偉業と呼ぶにふさわしい事です。そんなレジェンドの近くでいろいろな事を学べている自分は本当に幸運だと思います。
以上、3名のライダーとの出会いを振り返ってみました。 こうして、現在も同じ環境の中で、同じ目的に向かって共に活動出来るとは想像もしていませんでした。誰もが、周りの環境や、関わる人々との縁で、人生が大きく変わる事があると思います。 しかし、ただ漠然とその場に立っているだけではチャンスは訪れません。自分が輝ける環境は、自分で作っていくものです。当然自分の力では及ばない問題もあります。そんな時に「仲間」がいてくれる事が何よりも心強くなります。 そんな仲間との出会いも、いろんな場所でのご縁だと思っています。そんなご縁を今後も大切にしていき、さらに多くの「仲間」を増やし、自分自身も成長しながら、次なる世代へのきっかけ作りが出来る人になっていきたいと思います。
後藤克仁
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